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湊かなえさんのポイズンドーター・ホーリーマザー読書感想

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湊かなえ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」

WOWOWで連続ドラマ化が決定した湊かなえさんの「ポイズンドーター・ホーリーマザー」をご紹介します。

 

この本はどんな本?

2012年12月から2015年12月まで、「宝石 ザ ミステリー」に短編掲載された作品に書き下ろしの「ホーリーマザー」を加えて2016年光文社から出版されました。2018年8月には文庫本が発売されました。湊かなえさんのこの作品は、第155回直木賞候補作となりました。6つの短編から成っています。


あらすじ

「マイディアレスト」 一人の女性が警察の事情聴取を受けているようで、ほぼこの女性の独  白と回想でお話が進みます。この女性は無職で両親と暮らしています。スカーレットという猫を飼っていて大事にしています。それなりに平穏な毎日でした。そんな生活は、ある日妹の有紗が里帰りしてきたことで一変します。妹は出産のために戻ってきたのでした。子ども時代から自由奔放に育った妹に甘い両親。生活は妹中心に回り始めます。何かにつけ、姉を馬鹿にする妹と、それに同調する母親……女性は猫をいっそう可愛がります。

隣町で妊婦暴行事件が起こっていました。そんな折、妹有紗が襲われてしまいます。

「ベストフレンド」 脚本家をめざす漣涼香(さざなみしずか)はコンクールで最終選考に残りました。最優秀賞は大豆生田薫子(まみゅうだかおるこ)、優秀賞は涼香と直下未来(そそりみらい)の二人です。涼香には、他の二人の受賞者は容姿も才能も大したことがないと思えます。特に薫子のことは見下していて、励ましに見せかけて馬鹿にしたメールを送ります。

薫子は次第に脚本家として着実に歩みだしいきますが、涼香のほうはぱっとしません。いらだちは薫子にむかっていきます。

 

「罪深き女」 無差別殺傷事件を起こした青年黒田正幸。天野幸奈は彼の幼馴染です。正幸が黙秘を続ける中、幸奈が語ります。今回の事件は自分のせいだ、と子ども時代のことを警察で話します。二人は同じアパートの1階と2階に住んでいました。どちらも母子家庭だったこと、自分の母親は厳しい人だったこと、正幸の母親はだらしなく子どもを虐待していたことをすすんで話します。二人はどちらも不幸でしたが、ある事件が起こり離れ離れになりました。時が流れ、正幸が事件を起こす1週間前に偶然再会したのです。

 

「優しい人」 バーベキューにきていた奥山友彦が殺害されました。犯人は会社の同僚で交際相手の樋口明日実とされました。友彦の母親や友人、同僚の証言により優しく頭はいいが自己主張の苦手な友彦の生前像が浮かび上がってきます。一方の明日実は母親に厳しくしつけられ、人に優しくするように育てられました。明日実の独白の形でなぜ友彦が殺されてしまったのかが浮かび上がってきます。

 

「ポイズンドーター」 主人公は女優藤吉弓香。母子家庭で育ちましたが、母親に支配されてきました。成長するにつれて、母に強いストレスを感じています。中学の時の親友前川里穂も母親との関係に苦しんでいました。里穂が結婚し、二人の間は疎遠になっていきます。

女優の弓香に討論会のオファーがきます。テーマは「毒親」です。弓香かその討論会に出演し毒親について熱く告白します。さらに本も出版することになります。彼女はどんなことを語ったのでしょうか。

 

「ホーリーマザー」 ポイズンドーターの後日談です。弓香の親友里穂の視点から弓香と弓香の母親、自分の母親のことが語られます。

 

感想

人はそれぞれ考えや感じ方が違うので、人が言うことはあてにならないということです。うそをついているわけではないのですが、私とあなたは同じものを見ても違う風に見えているのです。この6編の作品を読むとそんなことを思いました。

特にこの作品では、母と娘の感じ方の違いが悲劇に続いていくようです。「毒親」などと、なんともやりきれない言葉がこの作品だけでなく、一時期結構目にしましたね。確かに子どもを虐待するような人でなしの親がいることも事実ですが……。大抵の親は手探りで子育てをしているわけで、子育てに正解はないのですから。

あとから「親の子育てが悪かったから、私は不幸なの!」と詰め寄られても何と答えていいのでしょうか。以前は初老になりかけの女性がお婆さんになった母親にこんな気持ちを抱きながら介護しているお話がありました。それはそれでわかる気もしますが、この作品の「ポイズンドーター」の弓香のようにまだまだ働き盛りの女性には似合わない気がします。自分の努力とか、自分の家族を大事にするとか、前向きに生きてほしいと思います。

姉妹に公平でない母、厳しくされた姉と要領のよい妹の図はありますね。親も一人目の子のときは初心者なので、力がはいってしまうんですね。お姉ちゃんにしたら割り切れないですが。

一人の視点ではわからない事件の真相が何人かの視点で明らかになっていく、結末はちょっとやりきれない感じになる湊かなえさんらしい短編集でした。

 

まとめ

それぞれの女性たちの苦悩や葛藤を書いた「ポイズンドーター・ホーリーマザー」はいかがでしたか。ドラマは吉田康弘監督で、キャストはもうすぐ発表されそうです。楽しみですね。

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