小説紹介

三浦しをん「仏果を得ず」

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世界が認めたデイープな日本

街を歩くと外国の方がずいぶんいらっしゃいますね。

さて外国の方たちの中には歌舞伎や文楽など、日本のデイープな文化を好きな方も結構いらっしゃるようです。 どちらもユネスコ無形文化財です。そこで普段はあまり目にすることのない文楽について楽しく読める本をご紹介します。三浦しをんさんの「仏果を得ず」、文楽を舞台にした小説です。2007年双葉社より出版されています。これを読んで文楽を知りましょう。

 

 

作者について

三浦しをんさんは小説や随筆を書かれています。「まほろ駅前多田便利軒」で2006年に直木賞を受賞されました。20代での受賞は4人目という快挙です。2012年には「舟を編む」で本屋大賞を、2015年には「あの家に暮らす四人の女」で織田作之助賞を受賞されています。いろいろな賞の選考委員も務められています。

 

物語の背景

人形浄瑠璃文楽は太夫(たゆう)、三味線、人形遣いが一体となって舞台がすすみます。もともと江戸時代に大阪で生まれ育った人形劇です。

日本の伝統芸能は親子代々かかわっている方が多いようですが(海老蔵さんとか)、日本芸術振興会では年1回研修生を募集し、文楽や歌舞伎の伝承者を養成しています

つまり、一般の人も文楽や歌舞伎の世界に飛び込めます。ただし相撲と同様対象は男子のみです。それが伝統のようですよ。

この養成所は入学できても、2年間の修行は大変きびしく研修開始8か月以内に適正審査があり、不合格だとやめさせられるそうです。なんて無情なんでしょう、きびしい世界ですね。

主人公健も一般人なのでこの養成所にはいります。

ところで、文楽と歌舞伎は演目が同じものが多くあります。もともとは人形浄瑠璃用の作品を歌舞伎で演じたりしたようです。

余談ですが、かつて歌舞伎役者が太夫に義太夫節(ぎだゆうぶし:物語の語り)の稽古をつけてもらったこともあるそうです。

 

あらすじと登場人物

一般人の健が修学旅行でみた文楽公演がきっかけで文楽に夢中になり、一人前の太夫を目指します。不器用な若者がひたむきに太夫への道を進んでいくお話です。

健は養成所を無事に終わっているので、太夫になるという第一の関門はクリアしています。さてここからが永遠に続くとも思える修行のはじまりです。

寝ても覚めても文楽一筋の健は立派な太夫になれるでしょうか。

健の師匠の銀太夫は芸には厳しいが、とってもお茶目です。奥様との掛け合いも楽しいです。

健とコンビを組む三味線奏者の兎一郎はかなり変な人です。でも芸にかける思いは健にも負けません。ぶつかり合ってばかりの二人です。

健が文楽を教えに行っている小学校の女の子ミラ、母親は美人です。この親子がやがて文楽一筋の健に絡んでいきます。

 

感想

普通の男の子が太夫をめざすのはハードルが高そうです。

文楽世界の方達は、生まれたときから文楽に囲まれて育ってきているのだから、スタートラインがそもそも違うと思います。

そのハンデをものともせず芸に精進していく健はアスリートのようです。

文楽漬けの健ですが、そこは若者のこと、好きな人も現れます。不器用な健の修行と恋の行方が絡まりあいながらすすみます。

相方の兎一郎や師匠との絡みもおもしろく、時にせつないこともあります。

敷居の高そうな文楽の世界がぐっと身近に感じられます。

三浦しをんさんは、不器用だけれど一生懸命な男子を描くのが本当にうまいです。

大阪の女の子ミラちゃんも可愛いキャラクターです。大阪は小学校から義太夫やるんだ、すごいなあ、本場は違うと感心しました。

以前TVに大阪の市民講座のようなところで、市民が本物の太夫に義太夫節を習っている場面が映っていました。大阪恐るべしです。

題名の仏果とは、修行を積んだ結果として得られる成仏(じょうぶつ)の境(きょう)だそうです(岩波国語辞典より)。

難しいのですが、たぶん悟りに到達するということのようです。その否定語なので、まだまだ悟れない、芸が極められないということではないでしょうか。

健の語る「仮名手本忠臣蔵」のの勘平というダメ男が「仏果なんてごめんだ、俺は死なないもん」と叫びます。文楽にのめり込む健の気持ちも、悟らなくてもいいもん、苦しんで文楽を極めてやるということで、「仏果を得ず」となったのではないでしょうか。

 

実際に文楽を見てみよう

現在定期的に文楽を鑑賞できるのは、大阪の国立文楽劇場と東京の国立劇場小劇場です。大阪は毎年1,4,6,7~8、11月に、東京は2,5,9,12月に公演があります。年1回愛媛県の内子座での公演もあります。また3月と10月に地方公演があり、全国を回ります。

地方公演は文楽の魅力を初めての人にも伝えたいという目的もあるようで、舞台の前に楽しい解説があります。地元の人が気楽に見に行くので、服装とか気にせずに行けます。昼の部と夜の部に別れています。演目はよく知られたものが多いようです。こちらのチケット代はデイズニーの1デイパスポート(大人)よりは大分お安いと思います。

YouTubeにもたくさん文楽の動画があります。

TVではEテレの「にっぽんの芸能」「古典芸能への招待」で不定期ですが文楽公演を見ることができます。副音声で解説もはいりますし、なんといっても画質が鮮明なので人形の表情や仕草、太夫と三味線奏者の語りや演奏が、舞台よりはっきりわかります。

是非一度あなたの目で文楽をご覧になってください。

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