家族愛に胸がつまる😢 世界でもっとも美しい別れ
一家の母親が、がんの宣告を受け、残り少ない日々を愛する家族とともに懸命に生きた美しくも哀しい感動作です。
- あらすじ
専業主婦のインヒは、医師の夫ジョンチョルとキャリアウーマンの長女ヨンス、医学部をめざして浪人中の長男ジョンス、そして認知症を患う姑の5人で暮らしています。
施設から姑を帰宅させ、家で世話をすることにしたその日から、インヒは目の回るほど多忙な生活を送ります。
朝には朝食の準備をし、家族を起こし、皆を送り出す。昼間は掃除に洗濯、姑の介護と息つく暇もなく働くのです。
それが当たり前とでも思っているのか、夫はろくに返事をしないし、長女は用意した朝食も食べずに飛び出して行き、浪人中の長男はいつまでもダラダラと寝坊しています。
そんな生活の中で、自分の体の不調を感じても「大したことじゃない」とついつい後回しにして来たのです。
「念のため…」と健診を受けに病院に行った時には、インヒの体は既にがんに侵されていたのでした。
担当の女性医師は夫の古くからの友人なので、とても心を痛めながらジョンチョルに妻のがん宣告をします。
それを聞いてジョンチョルは愕然とし、現実を受け入れられず、茫然自失の状態で帰宅します。
帰ってみると、娘と息子は好き勝手ばかりして我が儘放題、母は呆けて妻をてこずらせてばかり。そんな光景を目にして、家族に当たりちらします。
何も知らない家族は、父の態度に驚き、険悪な空気が流れます。
いつもと違う夫の様子にインヒは「何があったの? 私の検査結果が悪かったの?」と問いつめますが、ジョンチョルは真実を話すことが出来ず、「初期の卵巣がんだ。手術すれば治る」と嘘をついてしまいます。
インヒは疑いもせず、夫の言う通り手術すれば治ると信じていました。
しかし長女ヨンスは父の言葉を信じられず、ユン医師に会いに行き、改めて母の病状を知って悲しみにくれます。
一方、ジョンチョルは勤め先の病院との契約が切れ、解雇されたのですが、家族にはそのことを話せず、仕事に行くふりをして実は再就職先を紹介してほしいと友人たちを訪ねていたのでした。
やがて長男ジョンスも姉から母の病状を聞き、泣き崩れます。
そして今まで母に甘え過ぎていたことを反省し、これからは母を手助けして笑顔で暮らせるようにしてあげようと、姉弟ともに心に誓うのでした。
後日ユン医師の手でインヒの手術が行われましたが、開腹してみるともう手の施しようもないほど、がんは全身に転移していました。
自分はもう治らないと悟ったインヒは、少しずつ身の周りの整理をし始めます。
娘に料理の仕方を教えたり、貯金や財産の配分を夫に伝えたり、自分の死後に家族が困らないようにと何から何まで段取りして回ります。
ジョンチョルは、いずれ空気の良い所に引っ越そうと建て始めていた新居の準備にとりかかります。
この家はインヒがとても楽しみにしていて、「この部屋で外の景色を眺めながらお茶を飲みたい」とか、「この庭でバーベキューをしたい」とか様々な夢を描いていた場所なので、妻のために一日も早く完成させようと、ジョンチョルは汗だくになりながら準備します。
長女ヨンスは不倫関係にあった彼と別れ、母に頼らず自分の事は自分ですると決め、ますます仕事に打ち込みます。
長男ジョンスは、医学部入学を本気で望むようになり、「今年こそ合格する!」と受験勉強に身を入れ始めます。
そしてインヒの余命も残り少なくなったある日、家族4人で車で新居に向かいます。
すっかり完成した新居に着くと、インヒはヨンスにもジョンスにも1対1でお別れのあいさつをし、「どんなにあなたを愛しているか」を涙ながらに話して聞かせます。
最後の時間は父と2人で心ゆくまで過ごせるようにと、ヨンスとジョンスは新居を後にしソウルに戻りました。
その後の数日間、インヒはジョンチョルと2人きりでお茶を飲んだり、食事をしたり、散歩をしたり…と夢に描いていた通りの時間を過ごします。
そしてある朝、ジョンチョルが目覚めてベッドの隣を見ると、インヒは穏やかな顔で永遠の眠りについていました。
- 見どころ
全6話という短いドラマながら、ある家族の母親を中心に、周りの一人一人の生き様や悩み、家族のありかたなどに共感したり考えさせられたりする部分がギッシリ詰まっている作品です。
登場人物が多くなく、キャストも役にぴったりの名優たちが揃っています。
父ジョンチョルは、韓国のホームドラマには必ずと言っていいほど父親役で出演しているユ・ドングン。
母インヒは、いかにも世話好きなお母さんがぴったりのウォン・ミギョン。
キャリアウーマンの長女ヨンスには、チェ・ジウ。
浪人生のジョンスには、SHINEEのチェ・ミンホ。
そして認知症の姑には、これまたおばあちゃん役ではお馴染みのキム・ヨンオク。
こうして書き並べてみると、そうそうたるメンバーですよね!
母インヒが、がん宣告を受け余命を懸命に生きたストーリーが本筋ですが、家族一人一人の抱える悩みも浮き彫りにされています。
老いて職を失ったジョンチョルが再就職先に悩むところや、仕事では充実していても恋人には家庭があり、不倫関係であることに苦しんでいるヨンス。
なかなか結果を出せないことに苛ついて、時には友人とクラブ通いし、悪酔いして彼女を困らせるジョンス。
ギャンブル癖がなおらず、妻にも暴力的なインヒの弟のクンドク。
これらの家族の姿がとても身近に感じられ、心の琴線に触れる、せつなく哀しい物語です。
そして特筆すべきは映像の美しさです!
例えば雪が降ってきてインヒが車の窓から手を差し出す場面や、新居から眺めるのどかな田舎の風景や夕焼けなどは、あまりに美しくて「これは『冬のソナタ』や『秋の童話』のユン・ソクホ監督の作品?」と思ったほどです。
そんな美しい風景にもぜひ注目して、見てみてください。
➂感想
この家族の姿には、夫婦の関係、子どもたちとの距離、姑の介護など、きっと多くの人たちが経験してきただろう身近な問題がギッシリ詰まっています。
現在進行形で介護を経験している人にとっては、この姑のあきれた行動に「そうそう、うちもこれと同じ!」と共感するでしょう。
定年を迎えた夫の扱い方に悩んだり、成人したにもかかわらず親に頼りきって暮らす子どもに困り果てている女性はそこかしこにいます。
家長制度に厳しい韓国は、今の日本の家族の形とは違う部分もありますが、年を経て子が成長し、親も老いにさしかかり、将来に不安を感じるという点では、どこの国でも変わりはないように思います。
そんなどこにでもいそうな家族ですが、この母親インヒはあまりにも一人で重労働と苦労を背負い過ぎた気がしてなりません。
過干渉すぎる母親にウンザリする家族の気持ちが分からないでもありませんね。
家族の世話にかかりっきりで自分のことは後回し、体調が悪くても我慢するなんて、とても私には出来ません!
でも、それだけ母親に愛情たっぷりで育てられた子どもたちだから、母が余命わずかなことを知った時、嘆き悲しみ、自分を責め、これからは自分の力で生きていかなくてはと思うに至ったのでしょうね。
姑の介護の場面は、あまりにも現実味があって、思わず目をそむけてしまったほどです。
好物だからと柿をさしだせば「犬のウンチを食わせるのか!」と投げつけたり、「おもらしをしたのは時間通りに替えに来ないからだ!」と暴れたり…。
話には聞いていたけれど認知症って、こんなふうになるんだと哀しい気分になりました。
しかし終盤で、家族全員で旅行に出かけ砂浜で波と戯れたり、笑顔で記念写真を撮るシーンは、微笑ましく美しく、涙が止まりませんでした。
家族に愛されて、自分も家族の一人一人に「愛しているよ」と伝えて息をひきとったインヒの最期は、まさしく“世界でもっとも美しい別れ”でしたね😢
まとめ
夫婦・親子の誰とも、必ずお別れの日はやって来ます。
相手を大切に思う気持ち、感謝の気持ちは生きている間に伝えようというメッセージも多くの視聴者に伝わったことでしょう。
せつなく哀しい物語でしたが、見終わった後、心に温かいものも残りました。
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