逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-
- 導入
「逆賊」という言葉を聞くと、マイナスなイメージが浮かんできます。しかしホン・ギルドンは、民の英雄と言われるように民を救うために逆賊になった人物なのです。
朝鮮王朝の中で最も暴君とされる燕山君の時代に奴婢として生まれ、さまざまな苦難を乗り越えながら民の英雄にまでなった男の物語です。ホン・ギルドンは実在の人物とされています。ユン・ギュサン演じるギルドンは怪力童子とされていますが、精神的には最初は未熟です。怪力でありながら、未熟なギルドンの成長が見られます。
朝鮮では王の名は〇宗や〇祖と言われていましたが暴君で廃位になったような王は燕山君のように王族の時の呼び名の「君」なんだそうです。民のために戦ったギルドンの活躍だけでなく、歴史に残る暴君とはどんな人物だったのかを知ることができる面白いドラマです。
もう一人、朝鮮の歴史に残る人物チャン・ノクスも登場します。チャン・ノクスはチャンヒビン、チョン・ナンジョンとともに朝鮮3大悪女と呼ばれる人物です。イ・ハニ演じるノクスがどのように王に取り入り、悪女になっていくのかも楽しみなドラマです。
歴史に残る人物が多く描かれているこのドラマは、時に笑いを交えながら楽しくみられます。朝鮮一の暴君がどのような暴政を行い、どのように最期を迎えるのか?ハラハラドキドキのドラマになっています。
- 登場人物の紹介
ホン・ギルドン
実際に存在したとされる人物。怪力童子として幼少期から警戒されていました。母を亡くし、父親も捕まったことをきっかけに王族への復讐を誓います。罪を犯しても罰せられない人たちへの復讐の依頼を受け、仲間たちと盗賊として活動しているうちに燕山君の暴君さに怒りを覚えます。
ガリョン
コンファ(ノクス)がかつていた妓楼で付き人として生活していました。大けがをおったギルドンを助け、一緒に過ごすうちにギルドンに好意をよせます。妹扱いをされなかなか振り向いてもらえませんが、諦めずに猛アタックを続ける健気な女性です。
ホン・ギリョン(パク・ハソン)
ギルドンの兄。幼いころから頭がよく、こっそり勉強していました。父アモゲが捕まり逃げ切ったのち、奴婢の身分を隠してパク・ハソンとして科挙を受けます。王様にうまく取り入り目をかけられるように。
オリニ(サンファ)
ギルドンの妹。ギルドンと逃げている時にさらわれてしまいます。記憶を失い王宮の女官になっていました。ノクスに取り入り側近になります。
燕山君(ヨンサングン)
朝鮮第10代王で朝鮮王朝一の暴君とされた人物です。幼少期に母を亡くしますが、のちに毒殺だったことを知り激怒します。
チャン・ノクス(コンファ)
辛い過去を糧に身分を乗り越え出世を果たそうとする妓生です。絶世の美女ではないのですが、歌と舞の才能に恵まれます。大けがを負ったギルドンを助けたことがきっかけで恋仲になりますが、ギルドンが旅立ったのをきっかけに王宮入りします。王の寵愛を一心に受け、贅沢な生活を謳歌します。
アモゲ
奴婢として生まれ育ちますが、実は商売の才能もありました。ギルドンの怪力が災いをもたらすと知り、奴婢から抜け出すために財を蓄えます。しかし主人に財産があることを知られてしまい妻を殺され財産も没収されてしまいます。仲間とともに密貿易で成功し「親方」と呼ばれるほど皆に慕われます。
- あらすじ
ギルドンは奴婢アモゲの子として生まれました。実はギルドンは並外れた怪力だったのです。アモゲはギルドンの力が災いをもたらすと気付き、奴婢の身分から脱するためにお金を稼ごうとします。
ギルドンの正体を隠すには主人宅から離れて暮らす必要がありました。アモゲは泥棒のソプリと手を組みお金を稼ぎます。そのころアモゲの妻クモクは妊娠していました。
アモゲが財産を蓄えていると知った主人チョ参奉と妻チョ氏は財産を奪おうと画策します。その欲の犠牲になったのがクモクでした。クモクは男に突き飛ばされ岩にお腹をぶつけてしまいます。そして娘の出産後に亡くなります。そして復讐のためチョ参奉を殺してしまいます。
妻を亡くし悲しみに暮れるアモゲは仲間とともに住まいを移し、密貿易で商才を発揮します。成長したギルドンは女性を美しくさせる小物を売っていました。噂を聞いた妓生のコンファはガリョンを使いギルドンを呼びます。これが3人の出会いでした。
12年の年月がたち、チョ氏は夫を殺された復讐のためチュンウォン君にアモゲのことを密告します。アモゲは投獄され、ギルドン、兄ギリョン、妹のオリニは追われてしまいます。ギリョンと離れて逃げたギルドンとオリニ。ギルドンは矢に当たり倒れてしまいます。そそいてオリニは何者かにさらわれてしまいます。
大けがをしたギルドンを助けたのはコンファでした。奇跡的な回復をしたギルドンは妓楼で働き、コンファと恋仲になります。そんな2人の様子を見て次第にギルドンに思いを寄せるようになるガリョン。
ある日妓楼から旅立ったギルドン。それをきっかけにコンファは王宮に入ります。なんとかギルドンのそばにいたいと思い必死にさがしたガリョンはギルドンたちの仲間入りをします。死んだと思っていた父アモゲは実は生きていました。アモゲは仲間はみな家族だと言い「ホン」の姓を名乗ります。
その後ギルドンに見守られてアモゲは息絶えます。チュンウォン君への復讐を決心したギルドンは仲間と妓楼を作ります。言葉巧みにチュンウォン君をだまし、ギルドンはついに王である燕山君を動かしてチュンウォン君を流刑にさせました。
母の死は毒殺だと知った燕山君は、関わったものたちを粛正していきます。そして自分の意見に反対するものも次々に断罪していきます。そんな暴君の側室になったのがコンファです。彼女は出世のために王に近づき、ノクスと名乗って燕山君の寵愛を一心に受けるようになります。
チュンウォン君を倒してからギルドンたちは罰せられない悪人に立ち向かっていました。噂が広まり、妓楼にはギルドンを頼る人が集まります。盗賊のように依頼人の復讐をしてきたギルドンは、燕山君の目に余る暴政に怒りを覚えるようになります。
両班の振りをして役人になったギリョン、記憶を失い敵の手下になってしまったオリニ、私欲ではなく民の苦しみのために立ち上がったギルドン。そして熟成しないまま王になってしまった燕山君の戦いが始まります。
- 感想
逆賊というと、私利私欲のためという印象がありましたがギルドンは違いました。私欲なんて全くなく苦しむ民のためだけに戦っているというのが恰好良すぎます。父のアモゲは自分のためじゃなく家族のためにいつも戦っていたので、その父の影響が大きかったのだと思います。欲のためじゃないからこそ、アモゲやギルドンの周りには仲間が大勢いたのだと思います。
ギルドンは無敵のようで本当は弱い部分もあるのが魅力だと思います。ヒャンジュモクの民を守るために戦う前にも「この人たちを守れるのだろうか」と不安になっているあたりが人間味があって親近感がわきました。そういうギルドンだから人はついていくんだと思います。
そんなギルドンを支えるガリョンの存在もこのドラマの中で大きかったです。ギルドンは見向きもしないのに猛アタックをかけるガリョンはドラマの癒しでした。2人の思いが結ばれた時の幸せ感はすごかったです。ドラマなのに見ていて照れるくらいでした。ギルドンの戦いを支えたのは断然ガリョンだと思います。
朝鮮最大の暴君の暴れっぷりもすごかったです。追い詰められていくのがよくわかりました。その側室のノクスがどんな悪女っぷりを見せるのかと思っていたらドラマの中では悪女というより純粋に王を支える側室という印象でした。
この次の王は「チャングムの誓い」でおなじみの中宗です。最後のクーデターのあたりは「チャングムの誓い」にも出てきます。そんな目線で見るとまた面白いです。
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